名前を2つもつ男の話
狂った恋愛をした。
たった4ヶ月だったし、浮気されて別れの選択をとるというありがちな大学生の恋だったけど、たしかに私は狂っていた。
私は別れてから1週間後にこの上なく優しい彼氏ができた。周りから見たら、私が元彼を見捨てたことや今の優しい彼の横にいる選択は正しいことのように見えているだろう。
でも私はずっと後遺症が残っていた。
あのクズを受け入れられる度量がなかった私を責め続けた。
世界中で敵しかいないと怯えている彼を包めるのは私しかいないと思っていたから。
私は世界の敵から彼を守るという約束を裏切ってしまった、そんな罪悪感と共にずっと過ごしていた。
別れの選択は正しかったと言い聞かせないと苦しくなるぐらいに彼が心から居なくならなかった。
これは狂ってる。わかってる。
狂った恋愛をしている本を読んで、2年ぶりに連絡をしてしまった。
「貴方が浮かんだ」と。
狂ってる。
いいことなんてないのに。
そこから別れてからの気持ちや、本音を言い合って、答え合わせをした。
「君は人生で1番夢中になった人だったし、あの時は1番の理解者だった」と言われた。
全部過去形でも、あの時少しでも心に寄り添えられていたのだと思うととても嬉しくなった。
どうやっても近づけないと思っていたから。
どうせ続かない未来だったことはわかってる。
でもあの時もっと何かできたのではないかと考えている。し、もっと言えば今も理解者でいたい、支えたい、と思ってしまう自分がいる。しかもそれを伝えてしまった。狂ってる。どうしようもないのに。
定期的に会う関係性でもないし、また付き合おうとも思わない。でも私は彼を嫌いになれなくなってしまった。なんなら支えたがっている。
2年前のたった4ヶ月の出来事から、私は今もずっと狂っている。