舞台から見えるあの照明

「まぶしい照明をまぶしい笑顔で跳ね返す」

楽器を触らなくなって2年。吹奏楽が日常に埋もれていた6年間に比べるともう吹奏楽は非日常になってしまった。

しかし「あの夏」と言われて思い出すのはやはり吹奏楽部員と過ごした夏の大会までの時間だった。

ほんとうにつらかった。

普段の記憶から消しているのに思い出してみると未だに涙が浮かぶほど感情がつらさを覚えている。

レギュラーになれなかったこと、先輩に厳しくされたこと、後輩とうまくいかないこと、みんなと音が合わないこと、記録や記憶にはもう残っていないのに口が苦くなる。

"吹奏楽"のせいでどれほどの涙を流しただろう

いろんな味が含まれた涙は

大会直後の涙だろう

みんなで作った音楽

練習の日々

楽しかった昼休み

設けられた昼寝休憩や、勉強時間

私たちの夏

全てが終わる時だ。

指揮の指示で音が止まる一瞬の無音。

誇らしげに立った時に見える景色

この舞台に立った人しか見られないだろう

そこから鳴り止まない拍手に耳を熱くさせ

爛々とか輝く照明を見つめる瞳は潤みを帯びる

これ以上ないくらいに上がる口角が震える

「すべてが終わった」

ほっとした気持ちと

やりきった気持ち

あと少しの後悔

笑顔の脳裏に

半年間が走馬灯のように蘇る

母親の愛や友人叱咤激励

思わず授業中に泣き出したしまったこと

私たちだけの集大成ではなく先輩の期待や後輩の憧れも抱いて舞台に立っていたのだ

照明や笑顔と同じくらいに

満足感で満ちた私は眩しかった

舞台の外に出ると

ただただ咽び泣く。なぜか流れる涙を止めることができないのだ

甘くて苦くてすっぱい涙

全てがいい思い出に変わる瞬間だ

あの日の私よりも輝いてる私を見ただろうか

"吹奏楽"のおかげで得た私

また見せてみようか、あの笑顔を。

次はどこの舞台だ。